では、2022グランパスの決算分析の2つ目を書いていきます。テーマは、「無料招待券のバラまき」についてです。
ちなみにその1はこちら。
長文です。申し訳ありません。
結論ですが、「そもそも外部環境が違うから、収益モデルが違うのは当たり前じゃね?」です。しかしながら、やはり関東圏の某赤いチームの収益モデルはリスペクトすべきで、Jリーグ随一の売上高をたたき出していますし、今のところ理想とか目標とすべきは、この某赤いチームかと思います。
では、理由を3つほど。
理由①
売上シェア実績や県内企業数等のデータから見るグランパスの優先ターゲットは、スポンサー企業と予測できる。
売上高に占める各部門の比率(以下、売上シェア)ですが、グランパスは約61%(37億円)がスポンサー収入です。次に入場料収入ですが約11.5%(7億円)となっています。
対して、関東圏の赤いチームですが、スポンサー収入が約50%(40億円)、入場料収入が17.7%(14億円)となっています。実績として、グランパスは(他社比較ではなく)自社内での比較をした場合、他の収入源よりも(入場者の集客よりも)スポンサー収入の獲得が強い、と言えます。
次に、県内企業の市場環境を見てみます。県内企業数ですが、愛知県は経済センサスを見ると20万9,402企業、売上高は114兆3,469億円、付加価値額は18兆5,908億円となっています。対して埼玉県は企業数が16万262企業、売上高は37兆9,263億円、付加価値額は8兆4,856億円でした。愛知県の方がスポンサー市場として期待値が高いです。
さらにJリーグのクラブ数でも愛知県ではグランパスのみですが、埼玉県では某赤いチームと大宮があり2チームとなります。あえて単純な考え方をすると、グランパスは愛知県内の企業については他のサッカーチームと競争環境にありませんが、某赤いチームは大宮と競争環境にあります。
これらの要因から、売上高を増やすことを目的として、「いかに投資対効果の高い販売促進を掛けるか」、そしてそのために「どこにターゲットを絞るか」を検討すると、必然的にスポンサー収入を重要視するであろうことは簡単に想像できます。
理由②
スポンサーへのアピールを考えた場合、入場者数はプラスのイメージをもたらす。
では、スポンサーの満足度を高め、スポンサー数やスポンサー単価(ランク)を上げるには、どうすべきでしょうか。まず、J1での順位を首位争いのレベルまで高めてメディアへの露出を高めること、ファンクラブの会員数や入場者数を増やすこと、などでしょう。首位争いに絡むことやメディアへの露出が増えれば、スポンサーもクラブを応援していることの価値が高まります。高ランクのスポンサーにとってスタジアムに出す広告は、入場者数が増えれば増えるほど費用対効果が高まります。あと単純にスポンサーとしては、ホームゲームが盛り上がっていることは好印象なのではないでしょうか。
理由③
ホームゲーム開催費は固定費が多いと予想できるため、入場者数を増やしても大きな費用増にはならない。
グランパスは2022年、ホームゲームを22試合開催し、集客数が351,137人で開催費が3億6,800万円、2021年では集客数が229,578人で開催費が3億1,000万円です。ここから入場者一人当たりの変動費と固定費を計算すると(かなりザックリとした計算にはなりますが)、入場者一人当たり変動費が約477円、固定費が約2億円(1試合平均約911万円)となります。仮に1,000人の無料招待券をバラまいたところで、変動費の増加分は47万7,000円と大した額ではありません。(さすがに1万人の招待となると、かなりの負担増となりますが、その規模のバラまきは鯱の大祭典ぐらいしか実施しないので、問題ありません。)
以上3つの理由から、「費用負担が少なくて済むなら、無料招待券をばらまいて入場者数を集め、スポンサー企業を集める時のプラス材料にしてスポンサー収入の増加に努める」という戦略を取っていると予想します。これって、いけないことでしょうか。当然、理想は関東圏の赤いチームのようにスポンサー収入も入場料収入も確保できることです。しかしながら、そこまでの結果が出ていないグランパスにとって、一番売上獲得の見込めるスポンサー収入に絞って活動することは戦略としてアリだと思います。実際のところ、グランパスの入場者一人当たり単価は、2021年から2022年にかけて(おそらくバラまきの影響で)約590円下がっていますが、スポンサー収入は年間約2億円あがっていますので、狙った結果も出しています。
なので、某赤いチームのサポから無料招待券のバラまきを煽られるのは仕方ないと思いますが、無料招待券をバラまくことがグランパスやJリーグにとってマイナスになっているとは、僕は思いません。あくまでも個人的な意見なので反論等もあるかとは思いますが、そこは皆さまの広い心をもって暖かく読み飛ばしてやってください。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。長文、失礼しました。